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インタビュー・対談

2025.7.30

本気で未来を変えようとする起業家の挑戦を支援——キャピタリストたちの素顔

本気で未来を変えようとする起業家の挑戦を支援——キャピタリストたちの素顔

デライト・ベンチャーズ ベンチャー投資事業インタビュー

起業家とともに未来を切り拓く──。スタートアップの事業成長をハンズオンで支援する独立系ベンチャーキャピタル(VC)、デライト・ベンチャーズ。

多様なバックグラウンドを持つキャピタリストたちは、どんな想いで投資し、どのように起業家と向き合っているのか。本記事では、5人のキャピタリストのインタビューを通して、彼らの人柄が垣間見える支援スタイルや価値観、応援したい起業家像などを紹介。ベンチャー投資事業チームの「熱い本音」をお届けします。

仲間が語る“キャピタリストの人柄”

── 本日はベンチャー投資事業チームのキャピタリストの皆さんに集まってもらいました。まずは、お互いを理解し合う仲間として、パートナーの坂田卓也さんから“他己紹介”をお願いします。

坂田卓也(以下、坂田):ではまず、ディレクターでグローバルストラテジーを担う、牛尾正人さんから。

牛尾さんはマッキンゼーで鍛えたメタ認知能力と、DeNAで新規事業に取り組んだ経験に加えて、大学では宇宙工学を専攻していたこともあり、エンジニアリング領域のアプローチにおいてはキャピタリストの中でも右に出る人はいません。

牛尾正人(以下、牛尾):技術系の話は本当に好きですね。あと、海外案件も多く担っていて、現地で頑張っている起業家の支援や、海外展開を目指す出資先の事業を後押ししたいという思いが強いです。
ディレクター、グローバルストラテジー 牛尾正人
坂田:続いて、パートナーの西田光佑さん。彼は「本質 × 執念」の人です。物事の本質をつかみ、思考を深めた上で、現実に落とし込むのが得意。そして、最後まであきらめずにやり切る執念が素敵でリスペクトしてます。投資先を見ればそれがよく分かりますよ。

西田光佑(以下、西田):自分が見込んだスタートアップには、社内を説得してでも投資し切りたいと考えています。

坂田:すべてが合理的に説明できる企業ばかりではなくて、未来に向けて果敢にチャレンジしている企業も多いんです。西田さんの担当案件で簡単に決まった投資先はないんじゃないかな。

西田:ないですね(笑)。でも、そうして投資を決めた先は、すべてちゃんと成長しています。
パートナー 西田光佑
── それなら誰も文句は言えませんね。では、アソシエイトの有井菜月さんは、どんな方でしょうか。

坂田:有井さんはキャピタリスト未経験で入社し、直近でも素晴らしい投資先に出資することができました。これはひとえに彼女の行動力がずば抜けているからです。若手キャピタリストというポジションを活かした外交力で、カンファレンスやイベントにも積極的に参加し、コネクションを築いています。

有井菜月(以下、有井):若手としてイベントにはたくさん参加し、企画もするようにしています。会社や経験ある人たちの力を借りながら、スタートアップとVCや事業会社、あるいは学生とDeNAをつなぐような場を作り、良いつながりが生まれると良いと思っています。

牛尾:結果的に、デライト・ベンチャーズの中で若い起業家と一番多く出会っているキャピタリストですね。プライベートでサンフランシスコや韓国に行ったのに、ついでに現地のキャピタリストの集まりに参加したり。勇敢で行動力のある人です。
アソシエイト 有井菜月
── では、プリンシパルの芝原直也さんはいかがでしょうか。

坂田:もともと優秀で、自分のストーリー仮説を大切にしながら、本質的なゴールを目指して進むキャピタリストです。同じ案件を担当していた際、私から何かを吸収しようという気持ちが強かったのも印象的で、その“ハック思考”も良い。

芝原直也(以下、芝原):個人に出来ることは少ないと考えているので、いろいろな人を巻き込んでやっていこうとしている部分を見てくださっているのかなと思います。

坂田:芝原さんは、投資先の成長をどう加速させられるかという意識がとても強い。自分と起業家のリターンを一致させようとするアクション──南場智子風に言えば“「こと」に向かう”姿勢──を大事にしているんだと思います。

プリンシパル 芝原直也

── では最後に、坂田さんのご紹介を皆さんからお願いします。

牛尾:デライト・ベンチャーズの中では一番キャピタリスト歴が長く、実績も最多なので、知識の量が圧倒的です。特に製造業領域では、洞察力が神がかっていると感じます。そして、どんな状況でも一旦受け止めてくれる懐の深さがある。その上でしっかり後押ししてくれるんです。「柔よく剛を制す」といいますが、まさに“柔”な人だなと思っています。

西田:業界で一番経験があるのに、今でも誰よりも勉強熱心ですよね。

有井:坂田さんとスタートアップの面談に同席すると、その場で必ず何か、起業家と真剣に向き合い、ためになることを返そうとする姿勢を感じます。
パートナー 坂田卓也

オフィスアワーで南場への相談も可能。事業への解像度の高さが支援の強み

── デライト・ベンチャーズの強みについて教えてください。

坂田:デライト・ベンチャーズが起業家に選ばれている理由のひとつに、各キャピタリストが事業会社の現場でしっかりと事業経験を積んでいる点があると思います。それぞれが経験のある領域に強いのはもちろんですが、成功要因を分析して再現できるよう構造化し、他の領域やテーマにも応用していけるところを評価いただいています。

また、支援先からよく言われるのが、「事業への理解度や応援力が高い」という点です。あるスタートアップに出資のオファーをしたとき、そのスタートアップの既存投資先が、当社の投資先にリファレンスチェックを依頼したそうなのですが、そのときにデライト・ベンチャーズへの評価としてそう答えたと聞きました。

── グローバル観点ではいかがでしょうか。

牛尾:私たちは、グローバルで大きな成功を狙える事業を本気で応援しています。ただ実際には、こうしたスタートアップは日本ではまだ少ないというか、もっとたくさん出てきて欲しいと思っています。日本のスタートアップ・エコシステムが、シリコンバレーのエコシステムと地理的にも関係性としても遠いというのは、昔からの課題でした。

デライト・ベンチャーズはその橋渡しを意識しており、南場も定期的にベイエリアに出向き、現地のさまざまなVCや起業家とネットワークを築いています。そこから、日本のスタートアップへの投資や、海外展開の支援につなげるケースも出てきています。

──投資先スタートアップには具体的にどんな支援をしているのでしょうか。

芝原:支援のスタイルは、1社ごとにまったく違います。がっつり事業戦略の策定に入り込んだり、営業同行をするケースもありますし、海外ネットワーク等の特定領域の知見を中心に提供するような場合もあります。ある投資先では、3人のCxOそれぞれから個別に連絡をいただいて、相談を受けるということもありました。

──そんなこともあるんですね。

芝原:そうなんです。メンタルサポートに近い形で、社内では相談しにくい話を聞いてほしいと連絡を受けることもあります。キャピタリストそれぞれにスタイルはあると思いますが、私は比較的、寄り添いながら伴走するタイプですね。

牛尾:必要とあれば、南場が動くこともあります。実際、いろんな場面で登場しますが、月に1回の「オフィスアワー」という時間では、誰でもカジュアルに南場と話ができます。シードの起業家でも遠慮せずに、気軽に相談ができる環境は、良い支援に繋がるきっかけが生まれる場にもなっています。

企業価値の“残りの1割”を支える──VCとしての存在意義

── デライト・ベンチャーズが大切にしている価値観について教えてください。

牛尾:「起業家ファースト」であること、そして「ユニコーン・デカコーン級のグローバル企業を目指すこと」。この2つは、投資の判断や支援をしていくうえで、私たち全員が共通して持っている価値観だと思います。

西田:「起業家ファースト」を体現している例として、ファンドとしての意思決定の早さが挙げられるかもしれません。だいたい1か月以内には投資の判断を出しますし、他のVCより出会いが遅くても、出資決定の結論は一番早く出したというケースもありました。

逆に個人的には、面談の段階で「これは難しいな」と感じた場合は、その場で正直にお断りするようにしています。起業家からすれば、VCのリストを見ながら交渉していて、難しいとわかったなら早く候補から外したいはずです。

最初から投資する気がないのに、追加で資料をもらったりQ&Aを繰り返したりして、自社のデータベースに情報を蓄積しようとする行為は、起業家の貴重な時間を奪ってしまいますよね。

坂田:個人的には「起業家ファースト」というよりも、「起業家リスペクト」という言葉のほうがしっくりきます。私の肌感覚なのですが、投資の成功可否の9割は市場選定と起業家を見極める段階で決まっていると考えていて、残りの1割を、私たちVCがバリューアップや資金調達の支援を通じて積み上げていく。もしかすると1割もないかもしれませんが、それでもVCが起業家と一緒に成功に向かうために何でもすることが価値だし、そうありたいと考えるからです。

起業家は、他の誰にもできないことを社会のためにやろうとしている人たちです。彼らの挑戦や、社会に価値を生み出そうとする意志をリスペクトした上で、私たちも「業」として真摯に向き合う必要があると考えています。たとえば、スタートアップ側の状況とは関係なく、ファンドのライフサイクルを理由にExitを急かすようなことをしたら、それはリスペクトではないと思うんですよね。そのリスクは私たちが負うことです。

もちろん、リスペクトしたからといって、迎合すべきではありません。私たちだからこそ、そのスタートアップの「残りの1割」を最大化できる──、そういう自負を持って関わっています。

賭けるのは、本気で未来を変えようとする人

── では最後に、皆さんはどんな起業家を支援したいと考えていますか。

牛尾:世の中を変えること、良くしていくことに、勇敢に立ち向かっている人ですね。大きな野望を本気で実現しようとしている人に投資したいです。

AIは当然の前提として、それ以外でもたとえば、量子コンピュータの実用化。単に新しい技術をつくるだけじゃなく、その技術で未来を変えていく──そんなふうに、世の中をクリエイティブに捉え、GoogleやAmazonを本気で超えようとする起業家を支援したいと思っています。

有井:私は、領域に関わらず社会に残された課題を解決し、既存の枠組みを変えようとしている人に惹かれます。たとえば、ある分野で原体験や深い知見を持つ起業家が、大きなビジョンを描いて規制を打破したり、仕組みを変えようとチャレンジする姿を見ると、自然と応援したくなります。環境や食など社会の持続可能性を引き上げるような事業や、生活を豊かにするサービスも好きです。

坂田:私は、日本の産業や技術が生かされる領域に投資したいと思っています。キャピタリストの中には、起業家しか見ていない人もいれば、ビジネスしか見ていない人もいますが、私はその両方が大事だと考えています。

「日本のファンドが、日本人を、こういうビジネスだから応援している」というナラティブが必要なんじゃないかと思うんです。40代になって、残りの人生をかけてフルコミットできるような領域に集中したいと考えるようになりました。その一例が製造業やDX、AIなんです。

── 製造業とはものづくりのスタートアップですか?

坂田:中心はソフトウェアですが、ハードウェアが中心となるスタートアップも大きなチャンスがあると思います。例えば、昨今成功しているスタートアップの多い宇宙ビジネスは、ハードウェアが起点ですが、コンピュータシミュレーション、AIの技術の高度化により再現性やオペレーショナルエクセレンスが飛躍的に向上し、素晴らしいスタートアップが誕生してきました。同様にロボットなどの領域も、ソフトとハードの技術の発展に伴い、課題を大きく捉えることができるようになっており、非常に面白い時代になっていると思います。

「ディープテック」と呼ばれる企業も、彼らにとっては“ディープ”ではなく、ただの「技術」なんですよね。その技術を社会に実装していくには、技術をビジネスにしていく経験が非常に重要です。だからこそ、私たちが量産化や社会実装に向けて、GTM戦略や資本戦略、組織開発をしっかり支援していきたいと思っています。

西田:私は地方発で大きな会社をつくりたいという思いがあり、2022年に東京から大阪に移住しました。

牛尾:通称“西の西田さん”。投資先のABABAEX-Fusionも関西発のスタートアップですね。

西田:起業家の人柄でいうと、人から好かれて応援してもらえる人。そして、少しリミッターが外れているくらいの人が好きですね。たとえば、投資先のABABA代表・中井達也さんは、「一兆円企業をつくる」とか、「社員を一人も辞めさせずに会社を大きくする」と本気で言うんです。そういうことを大真面目に考えている人に、やっぱり惹かれます。

それに、起業家って、たとえ愛嬌がなくても人が自然と集まってくるような、カリスマ性を持っている人っていますよね。そういう人も魅力的だなと思います。

芝原:私は今、ヘルスケアとクライメート(気候)領域を多く担当していますが、社会課題の大きな分野には広く投資していきたいと思っています。

起業家に関して言えば、たとえば、自身が経験した強烈な原体験から、治療法の少ない患者に有効な治療法を届けたり、日本のサイエンスが世界に通用することを自分で証明したいと思っていたり。心の奥底に強い動機があって、起業を手段として本気で未来を変えようと突き進んでいる人を応援していきたいです。

※デライト・ベンチャーズでは、現在キャピタリストを募集しています。本記事を読んで興味を持ってくださった方は、こちらよりご応募ください。

Profile

Profile:

●パートナー 坂田卓也
2005年に凸版印刷へ入社し、出版、広告、玩具、ゲーム、駐車場・カーシェアリング、コミュニケーションプラットフォームなどの業界のマーケティング・新規事業支援に携わる。2014年4月より、経営企画に異動し、経営戦略部に所属。2016年より、CVCを立ち上げ、新事業創出を目的としたベンチャー投資およびM&A業務に従事。投資先スタートアップ25社とともに事業開発に従事し、複数社社外取締役を務める。2019年国内CVC部門の責任者を務め、2022年11月より、デライト・ベンチャーズに入社し、DX領域を中心とした日本発のグローバルトップ企業の投資育成に従事。2016年グロービスMBAを卒業し、現在はグロービスMBAの講師(ベンチャー戦略・経営戦略・マーケティング等)を務める。

●パートナー 西田光佑
2008年三井住友銀行に入行。関西の富裕層顧客を対象に資産の保全管理や運用、資産承継などに関わるサービスを提供するウェルスマネジメント業務に従事。2017年SMBCベンチャーキャピタルにて、ベンチャー投資およびハンズオン支援、バリューアップ支援等の業務に従事。2020年伊藤忠テクノロジーベンチャーズに入社。2022年にデライト・ベンチャーズに入社し、関西圏を主に担当。東京から大阪へ移住し、さらなる関西発スタートアップの創出を目指す。

●プリンシパル 芝原直也
2017年、東京大学農学生命科学研究科を修了し、デロイトトーマツコンサルティングに入社。戦略立案・BPR・システム導入等、多様な案件に従事。2020年、アクセンチュアに入社。戦略コンサルティング部門にて、事業戦略、ディープテック企業のデューデリジェンス、ESG観点での事業評価を担当。2023年、デライト・ベンチャーズに入社。経済性と社会性の両立をテーマに、細胞治療・合成生物学等のディープテック事業や、メンタルヘルス・脱炭素や地方創生に取り組むITサービスまで、幅広い領域で投資実行。

​​●ディレクター、グローバルストラテジー 牛尾正人
2009年DeNAに入社し、広告営業戦略、マーケティング、分析、経営企画/戦略、新規事業(海外展開、音声系アプリ、メディア・サービス、自動運転、EV関連事業、等)に従事。2021年10月よりデライト・ベンチャーズに参加。投資業務と平行して、投資先のグローバル展開支援や、関連するベイエリア・海外の起業家や投資家との様々な連携を推進。工学領域の出自で、ディープテックや、AIの盛り上がりにも大きな期待を寄せている。

​​●アソシエイト 有井菜月
2020年、東京大学経済学部を卒業し、野村證券に入社。証券アナリストとしてスタートアップが上場する際のリサーチ、上場企業のESG経営に関する分析及びレポーティングを担当。 2023年、デライト・ベンチャーズに入社。サステナビリティ分野をはじめ、社会課題の解決や新しい価値提供を行う幅広い領域のスタートアップのソーシング/デューデリジェンスに従事。

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