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2021.12.15

「出向 x 起業」の取り組み

Takashi Tsujiguchi
Takashi Tsujiguchi
Partner / CFO
「出向 x 起業」の取り組み

この度、デライト・ベンチャーズのベンチャー・ビルダーを通して起業した株式会社ウィズカンパニー株式会社zoobaが、経産省が進める「出向起業等創出支援事業」に採択されました。今回は、前回の経産省奥山さんとの対談に続き、この仕組みにデライト・ベンチャーズが注目している理由を紹介できればと思います。

社内で新規事業を起こす大変さ

そもそもこのような支援事業が実施される背景として、国・経産省がスタートアップ企業の創出の手段として「出向起業の促進」を掲げているという事実があります。経産省のウェブサイトには、その目指すところが記載されています。

大企業等人材が、所属企業を辞職せずに、自ら外部資金調達や個人資産の投下等により起業した、資本が独立したスタートアップへの出向・長期派遣研修等を通じて行う新規事業(出向起業)を支援しています。これによって、これまで活用されてこなかった経営資源(人材・知的財産含む)の開放を促し、新規事業の担い手の数を増やしていくことを目指しております。

「大企業からは、破壊的イノベーションを起こすようなビジネスアイデアや事業は出現しにくい」という課題は、すでに多くの企業で認識されているかと思います。ですので、今回はその問題を深堀りするのではなく、新規事業の担い手の数を増やしていくその手法の一つとして、ベンチャー企業として起業をさせる「出向 x 起業」が優れている点やメリットなどを中心にお話していければと思います。

なぜ出向人材が「起業家の有力候補」になるのか?

そもそもベンチャー起業を立ち上げるタイミングとしては、(1)学生時代から起業/卒業してすぐ起業、(2)一旦企業に就職してしばらくしてから起業する、の2つに大別されます。日本政策金融公庫の資料によれば、開業時の年齢の約70%弱が30代40代です。「開業」≒「起業」と考えた場合、年齢からしておおよそ起業のタイミングは「(2)まずは企業に就職して、その後しばらくして起業する」が大部分を占めると考えて間違いないと思われます。

どのような起業家が成功するのか?

これはもちろん一概には言えませんが、デライト・ベンチャーズのベンチャー・ビルダーから起業する方の多くは、(2)の方が多く、ご自身の経験を元に起業する方が多いように思えます。
例えば出向起業として採択されたzoobaの名和氏の場合、以前はDeNAの情報システム部門に所属していました。その中で、SaaSアカウントがあまりにも多く、一人一人に紐づいたSaaSが必要か不要か容易に管理できるシステムがないために、アカウントの管理に追われている課題に気がついたとのことです。社員が効率よく仕事できるようにシステム管理をするITシステム部門が、本来の仕事をするために、いっそのことサービスをご自身で作ろう!と考え、起業されたとのこと。自身が取り組んだ実体験があるからこそ、その課題に対してリアリティを持って取り組めるのでは?と思います。

出向起業とEIR(Entrepreneur in Residence/客員起業家制度) の親和性

デライト・ベンチャーズでは、設立当初からEIRの仕組みを採用しています。これまで日本で新規事業を立ち上げるパターンとしては、自ら独立起業するか、企業内部で新規事業部門にアサインされるかのどちらかのパターンしかなかったのでしょう。それに対して、我々は「企業に所属し給与を得ながら起業の準備できるEIR(Entrepreneur in Residence/客員起業家制度)」という制度を積極的に活用してきました。EIRについての詳細は、弊社プリンシパルである坂東龍による記事「起業家・新規事業創出のためのVenture Builder」をご覧いただくとして、結論から言いますとEIRの仕組みと出向起業の仕組みは酷似しています。デライト・ベンチャーズとしては、我々が進める「起業のハードルを下げる」取り組みが、国・経産省の考えと一致していることを喜ばしく感じます。そこで、経産省の進める「出向起業等創出事業支援制度」とデライト・ベンチャーズのEIR制度を比べながら、いかにこの仕組みがベンチャー起業創出のために上手い仕掛けを内包しているかをお話します。

「出向起業等創出事業支援制度」とEIRが内包する上手い仕掛け

出向起業に係る補助金の概要は下記の通りですが、注目したい点が3つあります。

1「大企業内では育てにくい新事業」を想定していること
2「社員が辞職せずに、自ら出向する」こと
3「子会社・関連会社ではない」こと

1「大企業内では育てにくい新事業」を想定していること

大企業での新規ビジネスアイデアが実現しない理由で良くあるのが「ビジネスアイデアは良いが、本業と関係ない・シナジーが考えられない」や、「売上・利益見込みが本業と比較して小さすぎる」などが挙げられます。実際に経産省の担当の方は大企業のマネジメント層とお話をする機会が多いそうですが、幾度となくこれらの理由で大企業内での新規ビジネスアイデアが止まっている事例を見てきたそうです。

出向起業等創出事業支援制度の仕組みは、議論のスタート時点から「大企業では育てにくい新事業」を想定しています。「イチ事業部内での事業ではなく、別会社で出向者が経営を行う」立て付けを取ることで、シナジーや事業規模云々といったノイズをできるだけ排除しようとしています。デライト・ベンチャーズが進めるEIRでは、そもそも(所属元企業との関係で)シナジーや事業規模という尺度では新規事業を計りません。あくまで、その新規事業の「素」のポテンシャルと起業家の人物で計る点で、出向起業等創出事業支援制度とEIRは考えを同じくしています。

2「社員が辞職せずに、自ら出向する」こと

「起業のリスクと考えて、まず何を思いつくか?」
起業と起業意識に関する調査』によれば「失敗したときのリスク」として真っ先にあがるのはやはり資金・収入面です。
「2020年度 起業と起業意識に関する調査」日本政策金融公庫 をもとに独自にグラフ作成
出向起業等創出事業支援制度の起業家も、「出向」を前提としています。これはリスクとして起業候補者が恐れる「安定した収入を失うこと無し」に、起業にチャレンジできるということです。もちろん、「駄目なら所属元に戻れば良い」ということではありませんが、「退職・収入を断って起業に挑戦する」という背水の陣と比較すれば、一定の収入がもたらす精神的安定は起業家にとってはありがたく、憂いが無くなることは新規事業の成功確率を上げうるものであると考えられます。

3「子会社・関連会社ではない」こと

最後に挙げられるのは、要するに「紐付き・お目付け役付きの起業ではない」という点です。出向起業等創出事業支援制度では、「出向元大企業の出資比率が20%未満であること」が要求されています。デライト・ベンチャーズのEIRがスピンアウトして会社設立・起業する場合でも、おおよそその程度に留めています。この理由は明白で、20%という数字を境に会計上「親会社による持分適用」の可能性が出てくるため、それをきっかけに親会社による統制が介在する余地が出てくるからです。折角大企業では芽が出ない新規事業を出向新会社で行うのに、親会社から口を挟まれて動きにくくなるのは本末転倒です。この出資比率の点でも、出向起業等創出事業支援制度とデライト・ベンチャーズのEIRは、過度な統制を置かず事業を育てるという目線で一致しています。

「出向 x 起業」に期待すること

今回の出向起業等創出事業支援制度の二次公募では、デライト・ベンチャーズから支援する株式会社ウィズカンパニーと株式会社zoobaの2社が採択されました。今回は2社の起業家ともに株式会社ディー・エヌ・エーからの出向起業家でしたが、デライト・ベンチャーズは数十人のEIRとともに日々事業アイデアを検討しており、次回は違う会社に所属するEIRの方との取り組みが採択されるよう努力しています。

デライト・ベンチャーズは、マネージングパートナーである南場が公言しているように、日本の起業問題を考える際に「優秀な社員を社内に閉じ込めておくのではなく、『ざくろの実をひっくり返すように中の宝石のような粒、事業や人材を表出させれば、表面積は増え、事業もおおらかに発展する』」と考えています。

今回の国・経産省が進める出向起業等創出事業支援制度は、「大企業に存在する経営資源(人材・知的財産含む)の開放を促し、新規事業の担い手の数を増やしていくことを目指して」います。まさにデライト・ベンチャーズと考えを同じくしており、我々もこの「出向 x 起業」の取り組みが日本のベンチャー起業の数を増やす上での有効な施策の1つと考えています。

デライト・ベンチャーズの取り組みに興味を持たれた方は、ぜひ我々のウェブサイトのコンタクト先からご連絡を頂ければ幸いです。

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