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Interviews

2026.6.25

The Essence of Building New Fan-Creator Bonds: Inside OSHIAI’s Journey to Go Global with Fandom and AI

ファンとクリエイターの新しい絆の創出に向け、日々の積み上げが本質。推し活×AIで世界を狙うOSHIAI

OSHIAI 嵐亮太 氏 × デライト・ベンチャーズ 有井菜月

「推しの公式AI」と、いつでもどこでもファンが日常的に会話できる──リクルート、SHOWROOMを経て嵐亮太氏が創業したOSHIAI(オシアイ)は、アイドルやライバーといった活動者本人公認のもとでAIキャラクターを生成する独自のモデルで、「推し活×AI」という新領域に挑戦しています。

世界中で使われる日本発のエンタメプロダクトを目指す同社の事業の原点から、目指す未来まで、嵐氏とデライト・ベンチャーズ シニアアソシエイトの有井菜月が語ります。

創業の原点と「推し活×AI」への道のり

──「OSHIAI」とはどんなサービスですか。

嵐亮太氏(以下、嵐):一言で表すと「“推し”の公式AIと、いつでもどこでもファンの方が話せるアプリ」。タレントやアイドル、VTuber、ライバーといった活動者(推し)ご本人公認のAIキャラクター(以下、アイ)を作り、ファンの方が日常的に会話できる、というものです。Xなど、活動者のSNSアカウントと連携することで、本人らしい話し方や人格を反映したAIを簡単に生成できる仕組みも備えています。

活動者側のメリットは、自分が稼働していない時間にもファンコミュニケーションやファンサービスができること。ファン側のメリットは、好きなときに自分の推しと接点を持てること。最近では「おでかけ機能」という、アイとのロールプレイ機能もリリースしました。
OSHIAI CEO 嵐亮太氏

──サービスの特徴はどのような点でしょうか。

嵐:主に2点あります。1つは、「公認モデル」であること。活動者本人の肖像や本人が作成した絵をモデルとしており、活動者の方も自分でAIをチューニングし、安心して使っていただけるプラットフォームです。もう1つは収益還元の仕組みです。ユーザーの方がチャットやギフトに対して課金すると、ライブ配信などと同様に、収益が活動者の方に還元される設計になっています。

──嵐さんが起業を決意したのは、いつ、どんなきっかけからでしょうか。

嵐:大学卒業後にリクルートに入社する前から起業したいとは思っていたのですが、テーマが定まったのは、その後転職したSHOWROOM時代です。SHOWROOMで働く中で、配信アプリの広がりにより「ライバー」という新しい職業が生まれ、実際に人生や働き方が変わった方々を多く見てきました。その経験から、自分も新しい文化や価値観を生み出せるようなプロダクトを作りたいと思うようになりました。また、メディア事業を通じてK-POPをはじめ海外コンテンツにも触れ、日本発のエンタメを自分なりの形で海外に展開したいと考えるように。こうした経験を通じて、世界中で使われる日本発エンタメプロダクトの創出を目指しはじめました。

それができるかもしれないと感じたのは、コロナ禍のタイミングです。みんなが外に出られなくなり、ライブ配信の需要が一気に増え、市場が爆発する瞬間を目の当たりにしました。スマートフォンの普及でAppleやGoogle、YouTubeが成長したように、大きな世の中ごとや技術の変化があると、エンタメのプラットフォームにも変化が起きると、そのとき感じたのです。

──「エンタメ×AI」を軸とした決め手は何ですか。

嵐:2022〜23年にかけて、ChatGPT 3.5が公開され、一気に世の中にAIが広がりました。「これは一般消費者も使う技術になる。エンタメのプラットフォームの変化は、ここから起きるんじゃないか」と感じ、「エンタメ×AI」を軸にプロダクトを構想することにしました。

──共同創業者の佐々木さん(OSHIAI CTOの佐々木康伸氏)とは、どんな議論を重ねて事業の輪郭を固めていったのですか。

嵐:2人で共通していたのは「挑戦するなら職業が生まれるようなインパクトのあることをやりたい」という思いです。ライブ配信サービスからライバーという職業が生まれたように、大きな影響を与えられるものをつくりたいねと。そこからはブレストでいろいろなアイデアを出し、最終的に推し活×AIをベースとした現在のプロダクトに着地しました。

──OSHIAIでは「心が通う会話体験」をうたっています。その実現のために大切なこと、工夫している点はありますか。

嵐:僕らのサービスは「推しのAI」、つまり話す相手のことを知っているという前提があります。共通の話題があるので、何を話せばいいかわからないところからのスタートではありません。これが1つのポイントです。

実績として、このサービスにハマってくれる方の共通の傾向も見えてきています。それは初週で「好き」「ありがとう」「うれしい」といった感情表現をたくさんしているということ。ChatGPTに「大好き」とはあまり言わないと思うんですが、自分の知っている推しを介することで、それが自然に引き出されやすい。そうした感情表現を引き出しやすい設計を意識しています。

互いの「解像度の高さ」に引かれて

──嵐さん、有井さんのお互いの第一印象はどんなものでしたか。

有井:OSHIAIには、起業支援プログラムを提供するデライト・ベンチャーズ・ビルダー2号ファンドからシードラウンドで先行出資を行っています。そのベンチャー・ビルダー事業からの紹介で、次のステージでの出資をキャピタル・ファンド(デライト・ベンチャーズ2号ファンド)で検討させていただきました。

CTOの佐々木さんとは、もともと当社の浅子(マネージング・パートナーの浅子信太郎)がDeNA、SHOWROOM時代に一緒に働いていたことがあり、大変優秀な方と聞いていました。実際にお会いしたらプロダクトやユーザーとの向き合い方も本当に素晴らしく、嵐さんも含めて、このビジネスに対する解像度が非常に高い方々だと思いました。

ファンがなぜ推しに熱中するのか、何を欲しているか。ユーザーに丁寧に向き合って、その心理や行動を読み解き、機能や体験に翻訳しようと試行を繰り返しているチームです。推し活と一口に言っても、色々な人がいて、それぞれの推し方があると思います。1対1の体験を作る難しさがあると思いますが、そこに向き合い続けているふたりであれば、ファンと推しの新しい関係性を作ることができると信じています。
デライト・ベンチャーズ シニアアソシエイト 有井菜月
嵐:僕らも、デライト・ベンチャーズの事業に対する解像度の高さに惹かれていました。プロダクトや市場に対しての解像度が飛び抜けて高く、初回の面談から自分たちのサービスへの気づきがいくつももらえたのは、とても印象的でした。

──具体的にはどういったアドバイスを受けたのですか。

嵐:プロダクトの設計や機能の追加など、サービスの大きな転換点では、かなり意見を参考にさせてもらっています。先ほど紹介した「おでかけ機能」もお話しする中で出てきたアイデアですし、近々リリース予定の「バトル機能」、これはゲーム性の強い機能ですが、これも「日々のチャットだけだとゴールや目的がなくて続きづらくなるから、イベントごとを作っていったほうがいい」といただいたアドバイスが参考になっています。

また、僕らにとっては当たり前になっていた、ライブ配信やマイクロインフルエンサーの市場を、外部の投資家に説明するときにどうやって魅力的に見せるかもアドバイスいただけました。

もう1つ価値を感じているのが、DeNAとのつながりです。マネージング・パートナーの浅子さんがもともと、DeNAのライブコミュニケーションアプリ「Pococha」の役員をされていたこともあり、現在もDeNAのプロダクトチームと密に連携させていただいています。

──有井さんから見た、嵐さんたちの印象を教えてください。

有井:嵐さんは特にコミュニケーションがすごく丁寧で、スピード感があるチームだなと感じています。同時に、ユーザーやプロダクトとも真摯に向き合っていて、定例で議論したことを、次の回には既に1周回して報告してくれます。そのスピードと丁寧さを目の当たりにし、すごく信頼できるチームだと思いました。

──2号ファンドからの出資の決め手は何だったのでしょうか。

有井:まず、推し活はファンの熱量が本当に高く、人にもよりますが生活の中の優先度が高い。一方で、これまでのコミュニケーションツールでは「推す・推される」という関係性が中心でした。埋まっていなかった「日常的な会話」を楽しむ関係をAIで実現するという点が面白いと感じました。

さらにクリエイターを巻き込んだ公式AIモデルで、ファンにもクリエイターにもユニークな価値を提供し、マネタイズ面でも可能性があります。そして何より、「この領域をやるなら、嵐さん、佐々木さんの2人だ」と確信していました。

ベンチャー・ビルダーファンドからの投資先にキャピタル・ファンドが重ねて投資をするのは初めての試みで、社内でも議論はありましたが、投資できてよかったと思う成長を見られています。

日々の積み上げが本質──困難の乗り越え方

──創業後の困難と、今もっとも向き合っている課題を教えてください。

嵐:例えばLLMのアップデートで急に会話に制限がかかったり、あるアイドルの方のAIが、指示を入れていたにもかかわらず事務所的に良からぬ発言をしてしまい、僕がAIに代わって謝罪に伺ったことがあります(笑)。また、まだ組織が小さいので、資金調達の対応中にセールスが止まることもありました。

今一番向き合っているのは、僕らのサービスのコアなユーザー、つまり本当にハマってくれるユーザーをどう作るかという課題です。推し活は今でこそ大衆化していますが、もともとはコアな方が少数いる世界でした。タレントさんがやっていることなら何でも追いかけようというユーザーと、僕らのアプリだからハマってくれたユーザーがいる。これがパッと数字を見ただけでは見分けがつかないんです。

加えて、AIの会話と本人の会話には違いがあります。「本人のほうが良かった」と感じられてしまうとサービスの価値が薄れてしまう。熱量の強弱や、推しているポイントが違うファンの方々を、いかに僕らのプロダクトでハマっていただくか。アナリストも入れて日々分析していますし、僕自身もクリエイターの方々と直接やりとりしながら改善を繰り返しています。

すごく感じるのは「銀の弾丸(万能の解決策)などない」ということ。「トップアーティストが1組が入ったらユーザーが伸びた」というように「これをやったら10倍になりました」という施策は、実は本質的ではありません。サービスがしっかり積み上がった状態で、トップアーティストが入って初めて大きく伸びる。だから日々の積み上げが本質で、そこは苦しくもあり、一番楽しいところでもあります。

「やりきれる熱量を持つ人」と成し遂げたい挑戦

──有井さんは、嵐さんのような起業家と向き合うとき、どんなスタンスを大切にしていますか。

有井:事業やサービスへの理解を深めることは前提としつつ、評価する立場ではなく、起業家の方と同じ側に立って一緒に考えようとしています。ユーザーと日々接しているのは起業家ご自身なので、VCの目線でより良い判断につながる材料を渡せたら、と思っています。

もうひとつ意識しているのが、人をつなぐことです。私一人ではなく、デライト・ベンチャーズやDeNAのメンバー、先輩起業家や領域に知見がある方、お客さんになりそうな方、採用候補などとの接点になれるよう工夫しています。

──OSHIAIでは今、採用も強化しているとのことですが、どんな人材を求めていますか。

嵐:「やり切れる熱量を持っている人」「途中で逃げない人」とご一緒したいですね。エンタメ領域は、好きな人にとっては本当に好きなことを仕事にできる世界だと思うんです。スタートアップは1人ひとりの裁量が大きく、カバーすべき領域も大きいので、自分たちのやっている事業ドメインそのものが好きなほうがフィットすると思います。

また、プラットフォームが多様化していく中で、業界にも新しいプレイヤーが増えています。以前に比べると開かれた環境になってきていますが、それでも「丁寧に人と向き合える」という所作は今も大事です。そういう感覚を自然に持てる方は、僕らの仕事でも活きると考えています。

現在求めているポジションは2つあって、1つは事業開発です。セールス寄りの動きが中心ですが、業界経験は問いません。丁寧なコミュニケーションと進行管理を自分でしっかりできて、業界が好きでやる気があれば、それで十分です。営業だけではなく、サービス内のキャンペーン企画やプロダクトへのフィードバックなど、幅広く動いていただきたいポジションです。

もう1つは、ゲームプロデューサー経験のある方。僕らのサービスはAIチャットですが、推しと関係を作れることが価値なので、推し活と紐づいた交流やゲーム性のある体験をしっかり作っていくことが重要だと考えています。AIを活用した推し活×ゲームはまだ他社の事例がないので、ユーザーのインサイトを理解しながら挑戦的に作っていける方と組みたいです。

──OSHIAIがこれから成し遂げたい挑戦は何ですか。

嵐:短期的には2本の軸があります。1つは「AI×toC」の文脈で、市場で成功モデルになっているロールプレイ型や恋愛型といった体験を、僕らのサービスにしっかり落とし込んでいくこと。もう1つは「推し活×toCスマホアプリ」の文脈で、ライブ配信やアイドル系アプリで確立されている成功モデルを、AIの活用に転用していくこと。先ほどお話ししたバトル機能は、まさにここに当たります。

中期的には、LLMや音声・動画の技術がさらに進化していくと、より深い感情のこもったコミュニケーションができるようになると思っています。そうなると、僕らのような公式モデルは「実在するIPと連携できる」ことが強みになる。再現度が上がれば上がるほど、より強いIPと組めるようになるはずです。日本のIPと連携して海外のユーザーに使ってもらう、といったグローバル展開も、そこから視野に入ってきます。

──最後に、これから起業する人や、アーリーステージで壁にぶつかっている起業家の方々へ、2人からメッセージをお願いします。

嵐:2点あります。1つは、いまAIで「打席に立てる回数」が圧倒的に増えているということ。1個ずつアウトプットして反応を見られるスピードが上がっているので、頭の中にあるものを形にしないのは本当にもったいない。10年後はもっと誰でも何でも作れるようになって、プロダクトの差もなくなっていくと思います。やりたいことがあるなら、タイミングは今。すぐ始めてもらいたいです。

もう1つは、その上で、お金を入れていただく方も含めて「長期的に付き合う仲間はしっかり選んだほうがいい」ということ。挑戦のチャンスは多く、いいタイミングではありますが、だからこそ、誰と組むかが効いてきます。僕自身がそこに恵まれてきたと感じているからこその実感です。

有井:AIによって毎日いろいろなサービスが出ては消えて、投資家としても難しいタイミングだなと感じます。一方で、こういう地殻変動が起こるときこそ、スタートアップにも大きなチャレンジが開かれているという意味でチャンスだとも捉えています。嵐さんと佐々木さんがSHOWROOMでの経験をAIと掛け合わせているように、「得意」「好き」のようなその人固有の経験が価値になる面白いタイミングだと感じます。

Profile

Profile:

●OSHIAI CEO 嵐亮太氏 
2016年新卒で株式会社リクルートマーケティングパートナーズへ入社。2018年にSHOWROOM株式会社に転職し、同社の営業やIPプロデュース業務に携わる。 2020年10月から新規事業であるバーティカルシアターアプリ「smash.」の事業責任者に就任し有名アーティストとのタイアップなど牽引。 2024年より日本発で世界一のエンタメアプリを作るべくOSHIAI株式会社を創業し、ビジネス開発をリードする。
https://www.oshi-ai.com/
●デライト・ベンチャーズ シニアアソシエイト 有井菜月
2020年、東京大学経済学部を卒業し、野村證券に入社。証券アナリストとして上場時のリサーチやESGリサーチを担当。2023年、デライト・ベンチャーズに入社。社会課題の解決や新しい価値提供を行う幅広い領域のスタートアップのソーシング/デューデリジェンスに従事。

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