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2023.3.23

子育て家庭に、沢山の喜びを届けたい!

子育て家庭に、沢山の喜びを届けたい!

起業家×投資家 本音対談 Growing Startups vol.5
マチルダ 代表取締役 丸山由佳 氏 × デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー 南場智子

起業家の情熱や事業成長にかける想いを投資家とともに振り返る「Growing Startups」第5弾は、テイクアウトステーションを通して子育て家庭に手作り料理を提供する「マチルダ」代表取締役の丸山由佳氏が登場。南場智子とともに、創業から今日までを振り返ります。その道のりには、二人に共通する痛みや喜びがありました。

起業のきっかけは課題の当事者になったから

丸山:2018年に最初の起業を行い、現在の事業の前身である「子育て家庭のためのミールシェアサービス」を開始しました。25歳で娘を出産したのですが、働きながら子育てするのが本当に大変だったことがきっかけです。今までは自分が課題の当事者になっても、世の中にそれを解消するサービスがありました。

でも子育て、とくに食の課題に関しては、すでにあるサービスを使ってもペインは解消されませんでした。なぜ子育てが大変なのかといえば、それは「孤独だから」というのが大きいと思います。そこで、食を通じて繋がりを持つサービスを始めたいと思いました。

南場:孤独を解消する繋がり=SNSを活用するのではなく、リアルビジネスを始めようというのが新鮮ですね。

丸山:子育てはリアルなものなので、インターネットだけで完結するサービスでは課題を本質的に解消できず、実物を伴うサービスでなければなりません。ほぼ全ての人が毎日関わる「食事」という切り口から、子育て家庭と社会との繋がりを作るサービスを始めたいと思いました。

実はサービスの構想を練って女性の事業家の先輩に相談しに行った時に、「育児は大変だけど喉元過ぎれば熱さを忘れる課題だから、事業にはしないほうがいいよ。」と言われたことがあって、その方はとても優秀な方だからこそすごく怒りが湧いてきました。「エネルギーもあって賢い人達がそうやって置き去りにしてきた課題だから、ずっと良くならないんだ」と。私が絶対やってやろうと決意しました。

というのも、恵まれていてエネルギーがある人は、そのエネルギーを社会に還元していく義務があると思っています。私はこれまで人間関係や機会にも恵まれた人生を送ってきたのですが、それは自分の努力で勝ち取ったものばかりではなく、社会から与えられたものも多いと思っていて、自分のエネルギーがあるうちはそれを社会に返す義務がある。課題の当事者になった自分が、この事業をやらないという選択肢はありません。

マチルダ 代表取締役 丸山由佳 氏

ミールシェアサービスは、コロナ禍などの影響もあり、2020年9月にクローズしましたが、「子育て家庭の食の課題を解決したい」という想いが消えることはなく、家庭料理のテイクアウトステーション「マチルダ」の事業を立ち上げました。

子どもを巻き込むのが体験設計のポイント

「マチルダ」で提供している料理。献立は主菜・副菜・汁物の3品を日替わりで当日に調理し提供

南場:キッチンカーやスーパーのお惣菜と大きく異なるのは、“家庭料理”を提供している、ということよね?家庭料理ってなんだろうね?

丸山:マチルダが考える“家庭料理”とは、背景に「人」を感じる料理です。事前に公開される献立表や、料理に添えるメッセージカードなどにも、料理をする人、献立を考えた人の顔と名前が出ています。メッセージには「最近は寒いからおでんにしたよ」「今が旬の野菜をたくさん食べてもらえるようにカレーに入れたよ」と、献立の意図も入れて、食べる人のことを想って誰かが作っていることをできる限り伝えています。また、日替わりのメニューを当日に調理していることも特徴ですね。

南場:マチルダは、家族分をお皿に盛って食卓に出すことを想定して梱包されていて、その形式もプラスチックパッケージのお弁当とは違って家庭料理感がでるよね。そうそう、先日、受け取りステーションにお邪魔してきたんだけど、料理を渡す人、受け取る人、その隣にいる子どもの自然な会話がよかったなあ。なにより、料理を受け取る親子がとても嬉しそうだった。スタッフと話をするのも、子どもにとっては楽しいイベントだよね。

マチルダの勝どきステーションに南場と浅子(デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー)が立ち寄った。(撮影:マチルダ)

丸山:そうなんです!実はそれも顧客体験として大切にしているポイントです。味覚よりも「食事」という一連の体験を子どもたちが楽しめて、興味を持てることがごはんをモリモリ食べることに繋がる、と私たちは考えています。

スタッフが「今日はピーマンだけど、食べられるかな?」と声かけをするだけで、子どもたちにとっては食べるきっかけになる。食卓を囲む子ども達や家族を巻き込んだ体験を提供できたらなと。それが、我々が完全にオンライン注文&宅配という形式をとらず、あえてオフラインの受け取りステーションを作っている大きな理由になります。

ちなみに、マチルダの受け取りステーションの前を通る子どもたちが、よく「マチルダさーん!」とスタッフに手を振って挨拶してくれます。お手紙を書いてくれる子もすごく多いんですよ。

マチルダキッズからのおてがみの一部

南場:その思いがサービスの細部に反映されて、これだけの喜びを提供できているんだよね。思いのない人が機械的に仕事をしても、この事業は作れないもの。

自分のスタイルで突き進め!

南場:丸山さんに初めてお会いしたとき、どーんと構えている感じが伝わってきて、安定感のあるお人柄だなと思いました。そして、誠実な人だと。人の本質は、いざ問題が起きたときに現れるものじゃない? 課題にぶちあたったとき、その場しのぎの言葉を発したり場を丸くおさめるような特効薬を飲んで逃げ切るという誘惑もある。でも、丸山さんはしっかりと問題に向き合い、社内のメンバーと対話していましたよね。

デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー 南場智子

丸山:一生懸命に生きている人との会話は大切にしたいんです。相変わらず、困難は乗り越えていないし、常に仕事と家庭とのバランスに悩んだり、もっとこうした方が良かったんじゃないかと反省したりしていますが……。

南場:「あのとき、こうすればよかった」「あのとき、こういう言葉をかけてあげればよかった」という思いは、一生、私たち経営者にはつきまとうものだけれど、むしろ、満足しきっているより悩み続けているほうが健全だと思うな。

丸山:私は自分で抱え込んでしまうタイプなんです。実際、2020年9月に家庭料理のミールシェアサービスをクローズしたときも、最後の最後まで一人で悩んで意思決定しました。そのときの反省から、次に事業をやるときは巻き込み力がある人と一緒にやろうと決めていたんです。そんな折、福沢悠月(前デライト・ベンチャーズ社員、現マチルダの共同創業者)に出会えたことは、大きな転機となりました。

南場:目の前のことにひたすら突き進んでいく悠月と、安定感のある丸山さん。ほんと、いいコンビだよねえ。

丸山:ええ、お互い、ないものを持っています。私は周りを惹きつけるリーダーになれているか自問して悩むことも多いです。事業を行うに当たって、南場さんが思うリーダーに必要な資質はどんなことでしょうか?

南場:丸山さんの人格や安定感、思いの強さは、十分に人を惹きつけていますよ。一点の曇りもない情熱は、何にも勝っていると思います。

私の場合は、自分ができないことを人に託していますね。託したことに対しては高いクオリティを求めるし、私自身も自分に対する仲間の期待に応えることは重視しています。かつて経営コンサルタントをしていた頃は、「自分が10人いたらいいのにな」と思っていたけれど、事業を立ち上げたら、自分ができないことがあまりにも多かった。それで、できないことは然るべき人に任せようと割り切りました。

もちろん、リーダーにもいろいろなタイプがいて一概にこれがいいとは言えません。どこまで細かい意思決定や実行を自分でするか、人それぞれです。細部も含め鮮やかな差配をし、それに人がついていくようなスタイルもあります。私はゴールを明確に示すことは必須だと思っていますが、それ以外は意思決定も実行も分担し、だいぶ人に任せて頼る方だと思います。自分がやりやすいスタイルを見つけるといいですよ。自分のキャラクターやスタイルは変えようと無理しないほうがいい、長丁場だからね。

喜びをより多くの人に届けるために、覚悟も必要

丸山:目下、目指しているのは、1万人の子どもたちに喜んでもらうべく、1日3万5,000食、300ステーションの展開です。そして、テイクアウトステーションが、地域の子供たちの見守り場になれたら、こんなに嬉しいことはありません。

南場:喜びの拡大再生産をしたいよね。同時に、多くの人にデライトを届けるために痛みを負う覚悟も必要でしょうね。目の前の人を幸せにすればダイレクトに喜びが伝わってくるけれど、もっと多くの人に喜びを広げるというゴールも忘れてならないこと。ときには、そのために目の前の人や顧客への対応を中断する意思決定をするべきときもあると思います。

丸山:実は、有明にあるマチルダのステーションを1度クローズしたことがあるんです。たくさんのお客様から「残念です」「どうかいなくならないで」というメッセージをもらいました。当時はそれがベストと考え決断しましたが、本当に胸が痛みました。私含めスタッフはその言葉を胸に、もっと前に進まなくてはと士気を上げ、2022年11月に有明での再開を実現できました。

南場:その痛みも、チームにとって大切なことよね。
DeNAでも新規サービスを何度も立ち上げクローズを経験してきたけれど、やっぱり、現場が心を込めて作ったものや、少なくとも誰かが喜んで使ってくれているサービスを終了する意思決定は辛かった。でも、それは喜びをスケールさせるために必要な過程であるし、経営者はその痛みをしっかりと感じて、覚えておかなければいけないと思っています。

丸山さんも挫折も紆余曲折も経て、「マチルダ」で顧客の喜びとしっかり向き合っている。今はその「喜びを届けている」というデライトを大切にしてほしいし、スケールを目指す上でも価値あるサービスを届けることにこだわってほしいと思っています。これからも応援して行きますよ!

Profile

Profile:

●株式会社マチルダ 代表取締役CEO 丸山由佳 氏

1児の母。株式会社ユーザベースを経て現職。娘との出会いに衝撃を受け、「こどもを取り巻くこの社会をもっと愛情深いものにしたい」という想いから、株式会社マチルダを設立。https://matilda.kitchen/


●株式会社デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー 南場智子

1986年 マッキンゼー入社。1999年 株式会社ディー・エヌ・エー創業、2019年 デライト・ベンチャーズ創業。

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