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2022/09/14

起業のきっかけは1通のスカウトメール。営業担当者が本質的な業務に集中できるサービスを提供したい

起業のきっかけは1通のスカウトメール。営業担当者が本質的な業務に集中できるサービスを提供したい

起業家×投資家 本音対談 Growing Startups vol.2
immedio 代表取締役 浜田英揮 氏 × デライト・ベンチャーズ プリンシパル 坂東龍

大きな課題解決に向けて事業創出を支援する、デライト・ベンチャーズのベンチャー・ビルダー事業。起業家と投資家との対談「Growing Startups」の第二弾は、この仕組みを活用して、セールステックの領域で事業創出を行った起業家と、伴走するベンチャー・ビルダー事業責任者が語ります。

起業のきっかけは、受け取った1通のメール

浜田:私は元々、営業DXサービスやクラウド請求書受領サービスなど、ビジネスデータベースを提供するSansanに勤めていました。2021年6月、転職サイトを介して「起業家候補の募集 | 起業を全力でサポートするスタートアップスタジオです」というスカウトメールを坂東さんからいただいたのが、最初の出会いでしたね。

坂東:ファーストキャリアが三井物産、その後はbitFlyerの海外拠点立ち上げと、徐々に大企業からベンチャーの領域に入ってきて大活躍されている浜田さんの経歴に着目したんです。

最初は名前も伏せられていて職務経歴しかわからない状態でしたが、大企業ならではの組織の論理を理解しビジネス推進されてきた経験があり、さらにITベンチャーや海外での開拓まで経験した方なら、起業家としても事業の立ち上げと推進が力強くできるだろうと、直観でピンと来たのを覚えています。

浜田:当時、デジタルの分野で起業したいという気持ちはあったんです。でも、私自身はプロダクトをゼロから作った経験がないし、エンジニアのネットワークもなく、どのように進めていけばいいか迷っていたところでした。そこへ絶妙のタイミングで、坂東さんからEIR(客員起業家)へのスカウトメール。専門家集団が事業立ち上げを支援するベンチャー・ビルダーの仕組みを初めて知ったことで、道が一気に開けました。

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株式会社immedio(イメディオ) 代表取締役 浜田英揮 氏

坂東:ベンチャー・ビルダー事業では、起業家が全力で走れる環境を提供しています。当時の浜田さんのように、起業したいという思いがありながら、具体的にどう動いていいのか思索している方に向けて、課題事象の発見やアイデアの明文化、プロダクトアイデアの検証、チーム組成などの支援をしています。

浜田さんの場合は、私から共有したデライト・ベンチャーズの事業アイデアリストの中に、ご自身の経験や興味とマッチするテーマがあったので、スピーディーに事業テーマが決まりました。そのテーマとは、ウェブサイト上で見込み顧客との商談調整を完結する「インサイドセールスオートメーション」という事業アイデア。私が勧めたいと思っていた案だったので、すでに浜田さんも注目していたのには、「お!」と思いましたね。この事業は以前から興味があったのですか?

浜田: Sansanのインサイドセールス部門の統括をしていた頃、電話で商談を取る若手中心のメンバーのマネジメントをしていました。ただ、自分がセールスの電話を受ける立場に立った際に、仕事中に知らない番号から繰り返し電話がかかってくることは、けっしていい体験ではないことも実感していました。

インサイドセールスは、獲得したリードに対して地道にコンタクトを取り、商談アポに繋げていく仕事ですが、とくにコロナ禍を経てテレワークが普及したことで、電話での商談依頼は益々繋がりづらくなり、大半が不通か留守番電話に終わってしまっていました。

優秀な若いスタッフが1日に何十件も電話をして徒労に終わるなんてもったいない。電話をかけずとも商談に進めるシステムがあれば、社会にとってすごく価値があるんじゃないかと思ったのがきっかけです。

坂東:マーケティングやセールスのマネジメント経験があったからからこそ、気づいた課題ですよね。

浜田:そうですね。ベンチャー・ビルダーの支援を受けて行った事業検証のためのマーケティング調査も、事業の方向性を決めるうえで大いに役立ちました。調査の結果、ターゲットとしている企業の約7割が興味を持ってくれたし、想定顧客に向けたプレ営業も好意的な評価で、需要を確信することができましたから。

坂東:最初にお会いしてから1年、プロダクト開発開始してから半年でスピンアウトと、ハイスピードで進んできましたね! 浜田さんは、とにかくゴールにむかって一直線だったし、自走力が半端なかったです。

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株式会社デライト・ベンチャーズ プリンシパル 坂東龍

浜田:スピーディーに運んだ一番の理由は、素晴らしいメンバーをアサインしていただいたこと。元DeNA取締役CTOの川崎修平さんや、同じく元DeNAの坪田朋さん(現クラシルを運営するdelyのCXO)など、素晴らしい開発メンバーのサポートがあったからこそです。

ベンチャー・ビルダーは一般の起業とどう違う?

坂東:浜田さんはこれまで、大企業からベンチャーまで、たくさんのご経験をされています。なかでも、起業に際して活かされたのはどんな経験ですか?

浜田:bitFlyerのアメリカの拠点長としてゼロからチームを作った経験と、Sansanでいくつかの新規事業に携わるなかで、CEOの寺田親弘さんを含む創業メンバーと何度も話をさせていただいたことですね。ここで学んだことが活きています。

坂東:逆に、そこまで好ポジションを築いていていながら別の道に行くのは、なかなか勇気がいることですよね。

浜田:私が起業を本格的に考え始めたのは39歳。部長として勤めていたSansanは一部上場し、プライベートでは3人目の子どもが生まれたばかりでした。完全に仕事を断ち切って起業に賭けるのは、たしかにハイリスクです。

坂東:日本は海外に比べて起業のハードルが高いんですよ。そもそも、事業の立ち上げ方や事業の検証方法が分からない、いきなり会社辞めて起業するには給料・生活のリスクがある、一緒に事業をつくる創業メンバーがいない、などという理由で起業に踏み出せない人も少なくありません。

浜田:その点、ベンチャー・ビルダーの仕組みは、現職を続けながら「この事業アイデアでいいのか」というところから一緒に検証できること、事業アイデアの検証をクリアしたら、給与を得ながら初期事業開発ができること、さらにその先に進めば投資家として継続支援をしてもらえるなど、フォローが手厚い。想像していた起業よりはるかにローリスクで挑戦できるのが魅力でした。一般的な起業とはだいぶ違いますよね。

坂東:会社に勤めながら休日を活用して起業の準備ができるし、起業のための調査費用も出る。いざ事業が決まれば、デライト・ベンチャーズに入社して給与を得ながら事業をスタート、実績が出て外部のVC(ベンチャーキャピタル)から資金調達できるようなったら独立起業、というのが一連の流れ。そしてスピンアウトする際には、新会社の株式のマジョリティを取得することができます。

最初からリスクを負うのではなく、段階的に進んでいく仕組みですね。3年弱の間ベンチャー・ビルダーの仕組みを運用してきた中で、累計13社が独立起業しました。

浜田:immedioも2022年9月14日に資金調達を発表し、独立起業しました。企業内での新規事業の立ち上げのメリットとスタートアップのメリットを両方享受できるのは、起業家にとっては大きな魅力です。

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坂東:背景には、起業のハードルを下げ、共に大きな課題を解決する事業を創出していきたいという思いがあります。起業しやすい環境を作るべく、パートナーの南場智子も政府に積極的に働きかけています。

浜田:支援をしていくなかで、ときには、失敗を目の当たりにすることもありますよね?

坂東:どんなに優秀な人でも、起業に失敗はつきものです。でも、その失敗が早い時期であれば学びになり、方向転換も容易になります。ベンチャー・ビルダー事業ではそんな失敗を早く発見できるのが強み。スピーディーに顧客ヒアリングや検証を重ねて、ポジティブな事象だけでなく、ネガティブ事象を積極的に見つけていく姿勢が大事です。

転びながらスキーとか自転車に乗るのを覚える感覚ですね。でも浜田さんはあんまり失敗してないように見えますが(笑)。

浜田:坂東さんがいてくれましたから(笑)。

坂東:傍らで見ていていつも感心していたのは、浜田さんの凡事徹底ぶり。顧客候補企業へのメールのフォローも丁寧だし、顧客リストも定期的にメンテナンスして速やかにアクションに繋げている。

起業家というとキラキラしたイメージがあるけれど、こういったひとつひとつの仕事を地道に丁寧にかつスピーディーににこなすことが重要ですよね。最高のパフォーマンスを出すために諦めず粘り強く推進する浜田さんの姿を見ていつもリスペクトしています。

浜田さん:私が仕掛けようとしているのは新しいプロダクト。だから、ひたすら「一緒にプロダクトで価値を実現していきたい」というお客様を探すのみ、です。

坂東:ベンチャー・ビルダーを活用した起業は、通常のスタートアップの起業に比べると比較的ローリスクの起業とはいえ、本業と両立させながら何ヶ月も起業準備をするのは、自分に厳しくないとなかなか完遂できないことだと思います。

浜田さんがまだ前職に勤めていた頃は、出勤前の朝4時から起業準備をしていましたね。毎朝目覚めてまずスマホ見るじゃないですか。すると、だいたい浜田さんから早朝に発信されたSlack通知がリストにたまっているんですよね。ああ、浜田さん早朝から頑張っているなあと(笑)

浜田:当時、夜は上の子2人に添い寝していたんです。子どもたちが朝目覚めたときに私がいないと泣いてしまうので、夜中に別の部屋で仕事するわけにもいかず……。結局、彼らが寝息をたてる傍らでPCを広げていました。

坂東:さすが、以前の勤務先で「Mr.ストイック」と呼ばれていただけのことはありますね!ゴールをきちんと見据えているから、苦労も当然のものとしてやってこられたんでしょうね。

浜田:いやいや、坂東さんの存在は本当に心強かったです。感謝しているのは、私の「こうしてほしい」「こういうふうにしたい」という思いに、いつも真摯に寄り添ってくれたこと。超多忙でありながら、相談したいと言えば時間を割き、デライト・ベンチャーズとしての回答を用意してくれる。私にとっての坂東さんは、まさに頼れるメンターでした。

坂東:自分は起業家と同じチーム内の支援者でありたいと思っています。もちろん、VCというビジネスモデルですから、スケールする事業なのか、成功に導ける起業家なのかなどを投資家の観点で見極め、厳しい判断をすることもありますが、普段はファイナンシャルな視点というよりは、共同創業者的な立ち位置で起業家を支援したいと考えています。そもそも私自身が事業を作るのが大好きですし。

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浜田:(坂東さんは)事業家・ビジネスマンの先輩としても尊敬しています。DeNAで新規事業をたくさん立ち上げ、坂東さんが立ち上げた結婚式場・結婚準備のクチコミサイト「みんなのウェディング」は上場まで果たしました。その才覚もすばらしいし、人望がすごい。坂東さんの紹介でお会いした方は皆さん、「坂東さんのおすすめなら、試してみようか」と快くサービス検証に協力してくれました。

坂東:そんなことを言ってもらえるなんて、ベンチャー・ビルダー冥利に尽きますね。今日はうれし涙で枕を濡らしながら眠りにつけそうです(笑)。我々も共同創業者としてつくってきた事業のためにできることは何でもやらなきゃと思っています。顧客候補企業の紹介も単に知り合いを繋ぐというのではなく、前提として「一緒に作り上げてきたこのサービスは良いもの」という自信があるから前のめりにサービス紹介できるんですよね。

逆に言うと、我々が自信を持って世におすすめできる事業アイデア・起業家じゃないと投資してはいけないと思っています。浜田さんとimmedioはまさに自信を持っておすすめできます!

臆せず起業にチャレンジできる場を作っていきたい

坂東:immedioが手がけるインサイドセールスオートメーションは、営業担当者が本質的な業務に集中できるように支援するサービス。営業の第一線にいる人たちにとって、効率化できる業務をデジタル化し、戦略立案など重要な業務のウェイトを上げられるのは画期的なことだと思います。

浜田:これを機に日本のセールステックSaaSがより盛り上がっていけば嬉しいです。

坂東:今は現状の無駄を削減する、ペインを解決するのがメインですが、今後は攻めの事業展開ができると思うんですよね。実際、顧客企業の営業担当の方が電話をするよりもimmedioを活用する方が商談に繋がる確率が高いという数字も出ています。

これはすばらしい価値ですよね! 事業はどんどん成長していってくれそうだと期待していますが、浜田さんはこれからどんな会社を作っていきたいですか?

浜田:シンプルにいえば、「良い会社」を作りたいですね。働いていて楽しく成長できる会社を作りたいです。前職のSansanはカルチャーがしっかりしていて、とてもいい会社でした。私自身これまで新事業としていくつかの会社を設立してきて、夢を持って入社した人が長く働ける環境を提供することは、それ自体価値があることだ考えています。

今度は、自分がそれを提供する側。私がSansanを辞めて起業したように、いずれは、次にチャレンジしてゆく人材を輩出したいと思っています。

坂東:ベンチャー・ビルダーにも、浜田さんの2号、3号のような人たちに来てほしいなあ。これからの出会いが楽しみです。

浜田: ベンチャー・ビルダーは、意欲はあるけれどなかなか起業に踏み切れない、という人にとっての救世主。私はこの年までいろいろ経験してきたことが起業に活かされている一方で、「もっと早く始めておけばよかった」という思いもあります。

早くこの仕組みを使って起業に踏み出しておけばチャレンジする回数も増えたんじゃないかと思います。でもまあ、今が人生で一番若い。まずは、おじさん起業家としての成功例になりたいです。

坂東:本当に頑張れる、優秀な人に起業してチャレンジしてもらいたいですね。起業家がどんどん頑張って、さらにその熱量がまた熱い人を呼ぶ……。ベンチャー・ビルダーはそこを目指しています。

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<プロフィール>
●株式会社immedio 代表取締役 浜田英揮 氏
新卒入社した三井物産では主にIT分野での新規事業を担当。Harvard Business School留学後、M&A推進室にて幅広い事業分野の投資案件の実行に当たる。2016年にbitFlyerに参画し、US拠点でCFO/現地拠点長を務める。米国外の企業で初のNY BitLicenseを取得し、仮想通貨取引所をローンチ。2019年からはSansanでグローバル戦略統括部長に就任。海外向けプロダクトScan to Salesforceのオーナーを務める。2021年からはBill Oneのプロダクトマーケティング及びインサイドセールス部門のマネジメントを担当。2022年4月より現職。
株式会社immedio:⁠https://www.immedio.io/

●株式会社デライト・ベンチャーズ プリンシパル 坂東龍
2003年にDeNA入社し、広告営業やネットソリューション事業でのコンサルタントを経て、「みんなのウェディング」を立ち上げスピンアウトまで事業責任者を務める。その後ソーシャルゲーム事業の企画部長、ペイジェント取締役、インキュベーション事業部長、SHOWROOM取締役等をつとめ、2019年10月からデライト・ベンチャーズに移籍し、ベンチャー・ビルダー の責任者として新規事業・スタートアップの創出・育成全般に尽力。

取材・文:芹澤 和美(Kazumi Serizawa)
編集:杜多 真衣(Mai Toda)
撮影: 織田 桂子(Keiko Oda)