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インタビュー・対談

2026.3.27

最終面接の不採用を「推薦」に変える、ABABAが生み出したユーザーの熱狂

最終面接の不採用を「推薦」に変える、ABABAが生み出したユーザーの熱狂

ABABA 久保駿貴氏・中井達也氏 × デライト・ベンチャーズ 西田光佑

就職活動で最終面接までたどり着いた学生が、不採用通知一通で「またゼロから」を強いられる。そんな理不尽さに疑問を持ったふたりが立ち上げたスタートアップがABABAです。最終面接経験者だけが登録できるスカウト型採用サービス「ABABA」は、今や大手企業を含む3,200社以上が導入するプラットフォームへと成長しました。

Forbes 30 UNDER 30 ASIA 2025にも選出された、ABABA共同代表の久保駿貴氏、中井達也氏とデライト・ベンチャーズ パートナーの西田光佑が、出会いのエピソードや乗り越えた壁、そしてこれからの挑戦について語ります。

友人の「就活うつ」が、すべての始まりだった

──まずは、ABABA創業の原点から聞かせてください。

久保駿貴氏(以下、久保):始まりは大学時代、僕の友人がある企業の最終面接まで進んだのに、結果は不採用で、そこから数カ月間連絡が取れなくなったことです。「就活うつ」のような状態になり、また一から就職活動をやり直さなければならないと、すごく落ち込んだ姿を見ました。最終面接まで残るということは、その人の能力や魅力は証明されているはず。それが評価されずに最初からやり直しになるのは、一種の「社会のバグ」のようなものです。このバグを何とかしたい、という思いがきっかけとなっています。

不採用通知は「ご活躍をお祈り」するメールを一斉送信して終わりというのが一般的です。それを、本当に次のチャレンジを応援するものに変えられないかと思いました。そこで、落ちて終了ではなく、「自社を受けてくれてありがとう、次も応援しています」ということがちゃんと伝わる、次に受ける会社への推薦につながる仕組みを設計していきました。
ABABA 代表取締役 CEO 久保駿貴氏
久保:創業当初、僕は岡山大学にいたんですが、コロナ禍の最中で外にはあまり出られない状況でした。夜な夜なオンラインで会議を重ねながら、プロダクトの中身を作っていった感じです。営業もSNSで人事の方にアプローチしたり、コンテストにたくさん出たり。計算したら賞金で550万円得ていたんですよね。日本政策金融公庫の創業融資500万円と合わせて、それが本当のスタートでした。
ABABA 代表取締役 CEO 中井達也氏

文字通り「廊下をうろうろした」衝撃のピッチ

──その後事業は加速し、2022年にはデライト・ベンチャーズからの出資が決まりました。西田さんと2人の出会いはどのようなものでしたか。

西田:私はデライト・ベンチャーズ入社後、東京から大阪へ移り住んだタイミングで、関西のイベントにいろいろと顔を出して「優秀な起業家はいませんか」と周囲に声をかけていました。その際、「もう東京へ行ってしまったけれど、ABABAという勢いのある会社がある」と耳にしていて。そうしたら、ちょうど中井さんからデライト・ベンチャーズの問い合わせフォーム経由で連絡をいただいたんです。

「あ、あのABABAだ!」となり、さっそくZoomで面談をしました。それでピッチを聞いた瞬間に「これ絶対いけるやん」と本当に衝撃を受けて、当時借りていた大阪のWeWorkの廊下を、文字通りうろうろしました。

久保:実は、僕らのほうでは「デライト・ベンチャーズはDeNAのOBにしか出資しないんだろう」と思っていたので、「ダメもとで連絡してみようか」くらいのノリだったんです。

中井:西田さんの第一印象は、「投資家っぽくない」でした。ベンチャーキャピタル(以下、VC)の方は、売上や数字面を中心に聞いてくる人がほとんどですが、西田さんが注目していたのは「ユーザーの熱狂」だけだったんですよね。どれだけユーザーが困っていて、その顕在課題にプロダクトがどれだけ刺さっているか。そこをたくさん掘り下げていただきました。

最終的な西田さんの投資決定の決め手も、僕らのテレビ出演時の映像に寄せられたコメントだったと後で聞きました。全部、すごくポジティブなコメントだったんです。それを「これはユーザーが熱狂している証拠です」と社内でプレゼンしてくださったそうで。僕が頑張って作った営業計画書より重視していたと聞いています(笑)。

西田:早いステージだったので、数字をゴリゴリ詰めてもしょうがないと思っていました。それより熱狂があるかどうかが大事だと。1.2億円の出資決定までは、2週間ほどしかかかりませんでした。
 デライト・ベンチャーズ パートナー 西田光佑
中井:デライト・ベンチャーズの印象で大きかったのが、「VCとしてどんな世界にしたいのか」がすごく明確に伝わってきたことです。例えば「上場の努力義務を課さない」「スタートアップの長期的な成長の自由度を上げる」といった思想で一貫した投資契約書を作っている。顔が見えるVCさんだなと感じて、久保と一緒に「ここから投資を受けよう」と決めました。

のちに退職する仲間との向き合い方で悩んでいるとき、南場さん(デライト・ベンチャーズ マネージングパートナーの南場智子)に相談して、かけてもらった言葉も支えになりました。「悲しむんじゃなくて、これまでの貢献に感謝を持とう」と言ってくれて。ポジティブな気持ちを持ち続けられる状態を作ってくれました。

久保:南場さんには、経団連の定期的な集まりで参加されている大手企業の経営者の方を紹介いただきました。僕たちだけでは何年もかかるような、信頼の獲得を後押ししてもらっています。

計画未達でも前を向く理由、内定承諾者数こそ本当の目標値

──シリーズA以降、順風満帆に見えていた裏で、苦しい時期もあったそうですが。

西田:シリーズAラウンドを終えた後、売上が計画通りに伸びなかった時期がありましたね。投資の検討段階で聞いていた売上見込に対して、ふたを開けると達成率60%にとどまってしまった。

中井:こちらとしては「それでも次に向けて行くしかない」という感じでしたね。翌年の売上計画は前年の3倍、その次はさらに2倍。「その時点で帳尻を合わせるんで」くらいの気持ちでやっていました。

結果、翌年に10倍近い成長ができたので、一旦はそこで追いつけた形です。でも計画通りいかなかった時期は本当に苦しかったし、「申し訳ない」という気持ちしかなかったですね。

──では、当初の想定よりうまくいったことはありましたか。

西田:私のnote記事にも書いたのですが、当初、私はABABAが中小企業向けのサービスになるだろうと思っていました。しかし、大手企業が次々と使ってくれるようになったのは想定外でした。どんな企業にも「広く紹介できるプロダクト」になっているのは、VCとして一番うれしいことの1つです。

久保:総合職の一般的な募集は、大手なら放っておいても応募が集まります。しかし大手企業であっても、デジタル人材や専門職は集まりにくい。そこに「競合他社や専門人材が多く選考を受けるような企業の最終面接まで頑張った学生のプールをご提案できます」とお話しすると、すんなり導入いただけることも多くなりました。

大手企業は採用予算も数億円規模。そこから数千万円規模を任せていただけるようになってきました。エンタープライズ企業からの売上が積み上がることで、会社としてのボリューム感も大きく変わってきています。

中井:大手企業を狙おうと考えたわけではなくて、「早く多くの人を救いたい」という気持ちが実っているんだと思います。創業のきっかけになった友人のような方を、少しでも早く、たくさん救いたい。外部の方には「売上50億」などと数字で分かりやすくお伝えするんですが、社内で持っている本当の目標値は、ユーザーの「内定承諾者数」なんです。ABABAを経由して何人の内定が決まったか。そちらの方が、実は僕らにとっての本質的な数字です。

根本にあるのは人材の適材適所化です。超大手の最終面接に落ちた優秀な人が、その後で本来行くべき企業にたどり着けない。そういうミスマッチを少しでも解消したい。「この企業の最終面接まで頑張った人なら、あなたの強みを活かせる別のところで評価してもらいませんか」という流れを作れれば、新卒市場のミスマッチ解消に少しずつつながっていくと思っています。

錦の御旗を立てられる人間に──これからの挑戦

──それぞれの今後の展望を聞かせてください。

久保:現在、ABABAの契約企業は3,200社ほどですが、新卒採用をしている会社は3〜4万社あります。まだまだサービスとして成長の余地を残しているので、そこにしっかりコミットしていきたい。一方で、HR領域における社会課題は新卒採用だけではなく、ABABAとして貢献できる領域はより広く、より深いと感じています。ABABAが果たすべき社会的使命をベースに、社会へのインパクトと利益のバランスを意識しながら進めていきたいですね。

中井:ミスマッチの解消というHR事業者として絶対やらなければならないことを、諦めずにやり続けることがひとつ。そして組織の器をどう広げるか、というのが個人的な宿題です。時価総額や売上ではなくて「なぜ私たちがやるのか」を追求し続けて、それに一貫したプロダクトとサービスを提供してファンを増やしていく。そういう錦の御旗を立てられる人間にならないといけないなと思っています。

もう1つ、事業を通じて気づいたことがあります。創業前の自分は正直、かなり利己的な人間だったんです。でも「誰かの困りごとを解決して、より良い世の中を作る」ということをやり続けているうちに、その先に自分自身の幸せがつながってきている感覚があるんです。人を幸せにすることで自分も幸せになれる、利他を返せば世の中も良くなるというペイフォワードの価値観を、事業を通じて広めていきたいという思いもあります。

西田:学生起業で、それも東京以外でスタートして、事業を大きくしているというのは、本当に稀なことだと思います。VCは裏方ですから、私は陰ながら応援するしかないのですが、投資先スタートアップに成功してもらうことがVCにとっても一番の成果になる。彼らが成功することが、次の挑戦者たちを後押しするメッセージになるので、引き続き全力でサポートしていきたいですね。

「いい会社」の条件は3つ、まずは量をやりきって

──最後に、後輩起業家へのメッセージをお願いします。

久保:南場さんや、楽天の三木谷さんといった方々は、睡眠時間を削って、朝から読書して、深夜まで動いています。そういう人たちが今でも全力でやっている中で、「あなたは今それだけやれていますか?」ということを、いつも問いかけとして、後輩には伝えています。まずは量をやりきってから悩んでほしいというのが、僕の正直なメッセージです。

中井:「いい会社」の必要条件は3つだと思っています。明確なミッションとビジョン、それを達成するための一貫したプロダクト、そして解決しようとする課題を自分ごと化できる仲間。この3つが揃っていれば、スタートアップの大抵の困りごとは乗り越えられる。逆にいえば、この3つを常に問い直し続けることが、起業家として一番大事なことだと感じています。

Profile

Profile:

●ABABA 代表取締役社長 久保駿貴氏
1997年生まれ。兵庫県明石市出身。岡山大学4年次、友人が就職活動に失敗したことをきっかけに「就職活動の過程が評価される」スカウト型サービス「ABABA」を創業。経済産業大臣賞をはじめ、数々の賞を受賞。東京MX「堀潤Live Junction」にてコメンテーターも務める。
●ABABA 代表取締役 CEO 中井達也氏
1995年生まれ。大阪府吹田市出身。関西大学卒業後、共同代表の久保と共に日本人学生と訪日外国人のマッチングサービスを提供する「GUIBO」を創業し、CVG中国地方大会最優秀賞、起業家甲子園全国大会準優勝。2020年に久保らと共に「ABABA」を創業。
https://hr.ababa.co.jp/
●デライト・ベンチャーズ パートナー 西田光佑
三井住友銀行に入行し、富裕層向けウェルスマネジメント業務を担当。2017年よりSMBCベンチャーキャピタル、伊藤忠テクノロジーベンチャーズにて一貫してベンチャー投資およびハンズオン支援に携わる。2022年デライト・ベンチャーズに参画。現在は拠点を大阪へ移し、関西発スタートアップの創出に尽力。投資先であるABABAでは社外取締役を務め、経営における議論のパートナーとして関与。MBA(経営学修士)。
https://note.com/ni1223

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